距離空間のメモ: 2024.03.29
非空集合$ Xと関数$ d\colon X \times X \to \Rに対し
$ x,y,z \in Xは任意とする.
D0: $ d(x,y) \ge 0
D1: $ d(x,y) = 0 \iff x = y
D2: $ d(x,y) = d(y,x)
D3: $ d(x,z) \leq d(x,y) + d(y,z)(三角不等式) $ \lang X,d\rangは距離空間という. $ Xの点$ aと正数$ \varepsilon > 0に対し
$ xを中心として半径$ \varepsilonの開球$ B(a;\varepsilon) := \{ x \in X \mid d(x,a) < \varepsilon \}と定義する. > $ Xの部分集合$ Uが次の条件を満たすとき$ Uは開集合(openset)という. $ Uの任意の各点$ x \in Uに対してある正数$ \varepsilonが存在して$ B(x;\varepsilon) \sub U
Cor
次は同値.
1. $ Uが開集合
2. 任意の$ x \in Uに対して$ B \sub Uとなる$ x中心開球$ Bが存在する.
3. 任意の$ x \in Uに対して$ B \sub Uとなる$ xを含む開球$ Bが存在する.
Lem: 開集合の諸性質
O1. $ \emptyset,Xは開集合.
O2. 有限個の開集合$ U_1,\dots,U_nの共通部分$ U_1 \cap \cdots \cap U_nは開集合.
O3. 任意個の開集合の和集合$ \bigcup_{i \in \lambda} U_iは開集合.
以下のいずれかの場合,$ Fは閉集合(closedset)という. 1. $ X - Fが開集合
2. 任意の$ x \notin Uに対して$ B \cap F = \emptysetとなる$ x中心開球$ Bが存在する.
3. 任意の$ x \notin Uに対して$ B \cap F = \emptysetとなる$ xを含む開球$ Bが存在する.
Lem: 閉集合の諸性質
C1. $ \emptyset,Xは閉集合.
C2. 有限個の閉集合$ U_1,\dots,U_nの和集合$ U_1 \cup \cdots \cup U_nは閉集合.
C3. 任意個の閉集合の共通部分$ \bigcap_{i \in \lambda} U_iは閉集合.
$ Xの点$ aと$ \varepsilon \ge 0に対し
$ xを中心として半径$ \varepsilonの閉球$ \bar{B}(a;\varepsilon) := \{ x \in X \mid d(x,a) \leq \varepsilon \}と定義する. $ Vが$ x \in Xの近傍とはいずれかを満たすことである. 1. $ B \sub Vとなる$ x中心開球$ Bが存在する.
2. $ x \in B \sub Vとなる開球$ Bが存在する.
3. $ x \in U \sub Vとなる開集合$ Uが存在する.
とくに$ Vが開集合であるときは開近傍,$ Vが閉集合であるときは閉近傍という. Example
開球$ B(a;\varepsilon)は$ aの開近傍である.
閉球$ \bar{B}(a;\varepsilon)は$ aの閉近傍である.
$ Xの部分集合$ Aに対し,$ x \in Xは$ Aの内点(interior pooint)であるとはいずれかを満たすことである. 1. $ x \in B \sub Aな$ x中心開球$ Bが存在する.
2. $ x \in B \sub Aな開球$ Bが存在する.
3. $ x \in U \sub Aを満たす開集合$ Uが存在する
4. $ V \sub Aを満たす$ xの近傍$ Vが存在する
$ xは$ Aの外点(exterior point)である$ \iff$ xは$ X - Aの内点である $ xは$ Aの境界点(boundary point)である$ \iff$ xは$ Aの内点でも外点でもない $ Aの開核(open kernel)あるいは内部(interior)$ A^\circ := \{ x \in X \mid \text{$x$ is interior point of $A$}\} $ Aの境界(boundary)$ \partial A := \{ x \in X \mid \text{$x$ is boundary point of $A$}\} $ Aの閉包(closure)$ \overline{A} := A^\circ \cup \partial A Prop
開球の開核はそれ自身: $ B(a;\varepsilon)^\circ = B(a;\varepsilon) Example
$ \overline{B(a;\varepsilon)} = \overline{B}(a;\varepsilon)は一般に成り立たない.
前者は開球の閉包,後者は閉球.
Lem: 開核の性質
1. $ A_1 \sub A_2なら$ A^\circ_1 \sub A^\circ_2
2. $ A^\circ \sub A
3. $ A^\circは開集合
proof:
1, 2. 定義より
3.
$ x \in A^\circとすると$ xは内点だから$ x \in B \sub Aなる開球$ Bが存在する.
$ B = B^\circだから1より$ B^\circ \sub A^\circより$ A^\circは開集合となる 1. $ X - A^\circ = \overline{X - A}
2. $ A^\circ = X - \overline{X - A}
3. $ X - \overline{A} = (X - A)^\circ
4. $ \overline{A} = X- (X - A)^\circ
proof:
1. $ x \in X - A^\circ
$ \iff$ xは$ Aの内点ではない.
$ \iff$ xのいかなる近傍も$ X - Aと交わる
$ \iff$ x \in \overline{X - A}
2. 1の補集合を取れば良い.
3. 1より$ X - (X - A)^\circ = \overline{X - (X - A)}だから良い
4. 2より$ (X - A)^\circ = X - \overline{X - (X - A)}より良い
Lem: 閉包の性質
1. $ A_1 \sub A_2なら$ \overline{A_1} \sub \overline{A_2}
2. $ A \sub \overline{A}
3. $ \overline{A}は閉集合
proof:双対性より.
Lem
$ Aは$ Xの部分集合とする.
1. 開核$ A^\circは$ Aに含まれる最大の開集合($ Aに含まれる全ての開集合の和集合)である
2. 閉包$ \overline{A}は$ Aを含む最小の閉集合($ Aを含む全ての閉集合の共通部分)である.
proof: 1
$ Uを最大の開集合とすると$ U \sub Aであり,開核の性質1より$ U^\circ \sub A^\circ
ところが開核の性質3より$ U^\circも開集合だから$ Uの最大性より$ U = A^\circとなる.
proof: 2
$ Fを$ Aを含む最小の閉集合とすると$ X - Fは$ X - Aに含まれる最大の開集合である.
すなわち$ (X - F) = (X - A)^\circだから
$ \overline{A} = X - (X - A)^\circ = X - (X - F) = Fとなって良い.
Cor
$ Aが開集合$ \iff$ A^\circ = A
$ Aが閉集合$ \iff$ \overline{A} = A
Prop
$ Aが$ xの近傍$ \iff$ x \in A^\circ$ \iff$ x \notin \overline{X - A}
Def
$ xが$ Aの集積点である$ \iff$ xを含む任意の開集合$ Uに対して$ (A - \{x\}) \cup U = \emptyset
$ xが$ Aの孤立点$ \iff$ A \cap U = \{x\}を満たす開集合$ Uが存在する.
Def
距離空間上$ \lang X,d\rangの点列$ (x_n)_{n = 1,2\dots}が点$ xに収束する
$ \iff任意の正数$ \varepsilon > 0に対してある$ n_0が存在し,$ n \ge n_0 \implies x_n \in B(x;\varepsilon)
これは以下の条件と同値.
1. $ x中心の任意の開球$ Bに対して$ x_n \in B ~ (n \ge n_0)となる$ n_0が存在する
2. $ xを含む任意の開球$ Bに対して$ x_n \in B ~ (n \ge n_0)となる$ n_0が存在する
3. $ xの任意の近傍$ Vに対して$ x_n \in V ~ (n \ge n_0)となる$ n_0が存在する
4. $ xを含む任意の開集合$ Uに対して$ x_n \in U ~ (n \ge n_0)となる$ n_0が存在する
$ (x_n)が$ xに収束することを$ \lim_{n \to \infty} x_n = xとか$ x_n \to x ~(n \to \infty)と書く.
Prop
距離空間上の点列の収束先は存在するなら一意である.
Lem
$ a \in \overline{A}$ \iff$ Aの点列$ (x_n)で$ aに収束するものが存在する
proof
$ \impliedby
対偶を示す.$ a \notin \overline{A}と仮定する
このとき$ a \in U \sub X - Aとなる開集合$ Uが存在する.
今仮に点列$ (x_n)が$ aに収束するとしたとき,$ x_n \in U ~ (n \ge n_0)となる$ n_0が存在する.すなわち$ x_n \notin A
しかし$ x_nは$ Aの点列であるから$ x_n \in Aであって,おかしい.
$ \implies
$ B_n = B(a;1/n)とする.
$ B_n \cap A \neq \emptyであるから適当に$ x_n \in B_n \cap Aを一つとってくる